名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)237号 判決
原判決を検するに、原審は、判示の通り、被告人の住居侵入並暴行の各所為を認定し、これに対し刑法第百三十条第二百八条第四十五条前段第四十八条第二項等を適用し、住居侵入の罪と暴行の罪とを併合罪の関係にあるものとして処断していることが明かである。しかしながら、原判決挙示の証拠に依れば、被告人は、小竹林しづゑの許諾なくして同人方に立入る際、同人若しくは其の場に来合せていた者に対し、暴行、脅迫を加えようとする決意を、既に固めていたものであることを認めるに足り、従つて、被告人の主観よりすれば、住居侵入は暴行の手段であつたことが明かであるのみならず、客観的立場から見ても、住居侵入と暴行との間には、通常手段結果の関係が存在すると考え得るから、これを併合罪として取扱つた原判決には、法令適用の誤りがあると言わざるを得ず、右の誤りは判決に影響するから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第一項第三百八十条を適用し、原判決を破棄した上、同法第四百条但書に依り次の通り判決する。
原審認定の事実に法律を適用すると、被告人の判示所為中住居侵入の点は刑法第百三十条、暴行の点は同法第二百八条に各該当するところ、其の間に手段結果の関係が存するので、同法第五十四条第一項後段第十条を適用し、重い住居侵入の罪の刑によりこれを処断すべく、所定刑中罰金刑を選択し、罰金等臨時措置法第二条、第三条を適用し、所定金額以下に於て、被告人を罰金弐千円に処すべく、右罰金を完納することが出来ないときは、刑法第十八条に従い金百円を壱日に換算した期間、被告人を労役場に留置すべく、訴訟費用の負担については、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により、被告人をして其の全部の負担を為さしむべきものとする。
よつて、主文の通り判決する。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)